サラリーマンとして働いている間は、会社の担当部署が健康保険や年金に関する手続きを代わりに行ってくれています。しかし、起業するにあたって、現在勤めている会社を辞めることになった場合は、これらの手続きを退社後は代わりに行ってくれません。起業した後の健康保険や年金はどうなってしまうのでしょうか?
そこで今回は、起業した後の健康保険や年金がどうなるのか分かりやすく解説します。
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起業した後の年金はどうなるのか
会社と雇用契約を締結している間は、会社の担当部署が健康保険や年金に関する手続きを代わりに行ってくれます。そのため、基本的には雇用契約を締結する際の書類に必要事項を記入すれば、それ以降は健康保険や年金のために何か手続きをしなければならないということはほとんどありません。
しかし、「もっと収入を増やしたい」「自分のやりたいことに挑戦してみたい」などの思いで起業を検討している人は注意が必要です。会社を辞めてしまうと、これまで会社が代わりに行ってくれていた健康保険や保険に必要な手続きを自分で行わなくてはなりません。
また、起業する際の方法が個人事業主なのか、法人を設立するのかによって加入できる健康保険や年金が異なってくるため、その違いも理解する必要があります。個人事業主の場合と法人の場合の健康保険と年金の違いについて見ていきましょう。
個人事業主の場合
個人事業主として起業する場合は、会社に勤めていた時に加入していた健康保険や年金をそのまま引き継ぐということはできません。会社に勤めている場合に加入する健康保険や厚生年金は、法人と雇用関係にある人のみ加入が認められています。
そのため、個人事業主の場合には、国民健康保険と国民年金に自分自身で切り替えなければなりません。勝手に切り替わるわけではないので注意しましょう。
法人を設立する場合
法人として起業する場合も、個人事業主の場合と同様、会社に勤めていた時に加入していた健康保険や年金をそのまま引き継ぐことはできません。しかし、個人事業主と違い、法人であるため、健康保険と厚生年金に加入することが可能です。
法人として起業する場合は、厚生年金と健康保険の加入が法律で義務付けられているため、国民健康保険または国民年金に加入できません。
日本の年金制度
個人事業主が加入するものとして国民年金、法人が加入するものとして厚生年金があるということは分かりましたが、具体的にどのような違いがあるのでしょうか?それぞれの年金制度の違いについて詳しく見ていきましょう。
国民年金とは
国民年金とは、日本の年金制度における1階部分にあたるものです。日本国内に住んでいる20歳以上60歳未満の全ての人が加入を義務付けられています。
国民年金の支払いは個人の全額負担であるほか、老後に受け取れるのは最低限の年金額であるため、老後の生活費が不足しないように対策を練る必要があります。
厚生年金とは
厚生年金とは、日本の年金制度における2階部分にあたるものです。厚生年金保険の適用を受けている会社に勤務している全ての人が加入を義務付けられています。
厚生年金の支払いは会社との折半なので半額負担です。厚生年金の支払額には、国民年金の支払額も含まれており、厚生年金の加入者は国民年金・厚生年金のどちらも受け取ることが可能です。
退職した後は安定した収入が確保できなくなることを考えると、年金の受給額が多い厚生年金の方が安心できると言えるでしょう。
日本の健康保険制度
年金が国民年金と厚生年金の2つに分かれているのと同様、健康保険も通常の健康保険と国民健康保険の2つに分かれています。健康保険と国民健康保険にはどんな違いがあるのでしょうか?それぞれの健康保険制度の違いについて詳しく見ていきましょう。
国民健康保険とは
国民健康保険とは、市町村もしくは国民健康保険組合が行っている保険で、フリーランスや個人事業主が住所のある区域内の市町村で加入します。保険料は前年の所得を基準に算出されますが、全額自己負担です。
健康保険には、傷病手当金と呼ばれる病気やけがで働くことができない場合に受け取れる手当てがありますが、国民健康保険には傷病手当金がありません。また、扶養という概念がないため、被扶養者の数が多いほど保険料が高くなります。
健康保険とは
健康保険とは、厚生年金の場合と同様、会社に勤務している人が加入する保険で、保険料は会社との折半です。
国民健康保険にはなかった傷病手当金があるほか、扶養という概念があるので被扶養者の保険料がかからないという特徴があります。そのため、国民健康保険と健康保険を比べると、健康保険の方が国民健康保険よりも優遇されていると言えるでしょう。
任意継続を利用するのも1つの選択肢
個人事業主やフリーランスとして起業する際は国民健康保険に加入しますが、任意継続を利用することで退職後も最大2年間国民健康保険ではなく健康保険に加入することが可能です。任意継続を利用するメリットとデメリットはあるのでしょうか?メリットとデメリットを見ていきましょう。
任意継続を利用するメリット
任意継続を利用することで、最大2年間は健康保険に加入できるとのことですが、その際に適用される保険料は国民健康保険ではなく健康保険の保険料となります。つまり、国民健康保険であれば、扶養家族の数が増えることで保険料の負担が大きくなりますが、健康保険であれば扶養家族の数が多くても負担が変わらないため、保険料を抑えることが可能です。
また、傷病手当金が受け取れることを考えると、しばらくは任意保険で健康保険に加入していた方が良いと言えるでしょう。
任意継続を利用するデメリット
「任意継続を利用した方が国民健康保険に切り替えるよりも得なのでは?」と思った人も多いかもしれませんが、デメリットを理解してから利用を検討することをおすすめします。任意継続を利用するデメリットとして挙げられるのは保険料の負担です。
会社に勤めている場合は、健康保険の保険料は会社との折半でしたが、任意継続では全額を負担することになります。任意継続は、退職後にいつでも利用できるものではなく、退職後20日以内に必ず手続きしなければなりません。また、一度でも支払いが滞った場合は継続できなくなるので注意が必要です。
任意継続を利用する際は、国民健康保険と健康保険のメリットとデメリットを比べるだけでなく、どちらの方が保険料を抑えられるのかよく考えてから利用しましょう。
国民年金は国民年金基金を利用するのも1つの選択肢
国民年金は年金が少ないため、老後に不安を感じている人も多いのではないでしょうか?そのような人におすすめするのが国民年金基金です。
国民年金基金とは、フリーランスや個人事業主として起業した人に向けた年金の2階部分です。掛け金は自由に設定できるほか、全て社会保険料控除の対象なので、国民年金だけで不安という人には最適と言えるでしょう。
まとめ
起業するとなると、自分で健康保険や年金の手続きをしなくてはなりません。個人事業主として起業する際には国民健康保険と国民年金、法人として起業する際には健康保険と厚生年金に加入しますが、自由に選べるものではないので仕組みをしっかりと理解することが重要です。
また、国民健康保険・健康保険、国民年金・厚生年金にはそれぞれメリットとデメリットがあります。それらをよく理解した上で、不足する部分を任意継続や国民年金基金で補うなど、対策を練ることが起業する上で重要と言えるでしょう。
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